共有不動産の税金を共有者のうちの誰かが支払わなかった場合、他の共有者に請求がされるのか?
共有不動産にかかる税金を共有者の誰かが滞納した場合
続いて、共有不動産にかかる税金を共有者の誰かが支払わなかった場合にどのようなことが起きるのかについて、税金の種類ごとに解説します。
不動産取得税・固定資産税・都市計画税・登録免許税には共有者全員に連帯納税義務がある
<不動産取得税>
不動産を共有名義で取得した場合、不動産取得税を共有者全員が連帯して納付する義務があります(地方税法第10条の2第1項)。つまり、共有者の誰かが税金を納めなければ、その他の共有者が代わりに納税しなければならないということです。
不動産取得税の納税通知書は、課税する都道府県によって、共有者のうちの代表者一人に対し送付されるケースと、共有者全員に送付されるケースがあります。ただし共有者全員に送付するケースであっても、各共有者の持分で按分した一人分の税額を送付するわけではなく、あくまで全体の税額を記載した通知書が送られます。
納付については通常は共有者の代表が一括して納付を行い、その後各共有者が負担すべき税額を共有者間で精算することになります。
<固定資産税・都市計画税>
共有で不動産を保有している場合に課される固定資産税・都市計画税についても、不動産取得税と全く同じ規定(地方税法第10条の2第1項)に基づき、共有者全員に連帯納税義務があります。
固定資産税・都市計画税の納税通知書は、ほとんどの場合共有者の代表者一人に対し送付されます。納付についても通常は納税通知書を受領した共有者の代表が一括して納付を行い、その後各共有者が負担すべき税額を共有者間で精算することになります。
なお、納税者からの希望により、持分に応じた納付書を各共有者に送付してくれる市町村もあるようです。ただし、あくまで住民サービスの一環であり、連帯納税義務がなくなるわけではありませんので、注意が必要です。
<登録免許税>
登記等を受けるものが2人以上あるときは、連帯して登録免許税を納付する義務があります(登録免許税法第3条)。従って、共有物について登記等をした場合には、その登記等を行った共有者が連帯納税義務を負うことになります。
相続税は相続人等に連帯納税義務がある
同一の被相続人(亡くなった方)から相続または遺贈により財産を取得した全ての者は、相続税を連帯して納付する義務があります(相続税法第34条第1項)。通常、相続税は各相続人等が取得した財産に応じた税額を納付することになりますが、相続人等のうちの誰かが相続税を支払わなければ、他の相続人等が代わりに納税をしなければならない、ということです。ただし、他の相続人等が肩代わりする税額は、その相続または遺贈により受けた利益の価額が限度とされます。
相続税については、財産の共有者かどうかにかかわらず、その相続・遺贈により財産を取得した者が連帯納税義務を負いますが、その相続・遺贈により各相続人等が取得した財産の額を超えてまで納税する必要はない、ということになります。あくまで相続単位で見ていく、という意味合いだと思います。
贈与税は贈与者に連帯納税義務がある
贈与により財産を共有で取得した場合、その財産の共有者には連帯納税義務は課されていません。
ただし、財産を贈与した者(贈与者)に対し、その贈与した財産の価額に応じた贈与税について、連帯納税義務が課されています(相続税法第34条第3項)。
贈与税は本来贈与を受けた者(受贈者)が納付すべき税金ですが、受贈者が納税しなければ、贈与者から徴収することになる、ということです。
譲渡所得税・法人税・消費税は原則として連帯納税義務なし(各共有者の持分に応じた税額を納付すればOK)
譲渡所得税と法人税には連帯納税義務はありません。譲渡所得税と法人税は、いずれも各納税義務者ごとの所得に応じて課税される税金なので、各共有者の持分に応じた税額を納付すれば足りることになります。
消費税についても、原則として各共有者の持分に応じた税額を納付することになります。ただし、共同事業で生じた消費税については、各共同事業者に連帯納付義務が課されます(国税通則法第9条)。
おわりに
ここまで、共有不動産にかかる税金を共有者の誰かが滞納した場合にどのようなことが起きるのか、について解説をしてきました。
不動産には様々な場面で税金がかかりますが、連帯納税義務が課されている税金について、納税義務者の誰かが滞納すると他の共有者等に請求がされることになります。連帯納税義務は、各納税義務者がそれぞれ独立して全額を納付する義務が生じますので、納付を拒絶することはできません。他の共有者等が代わりに納付をしても、納期限を過ぎていれば延滞税等のペナルティの対象になりますし、全額を完納しなければ財産の差押等の滞納処分に移っていく可能性がありますので、注意が必要です。
連帯納税義務により思わぬ税金の支払いが生じないよう、共有ではなく単独で財産を取得することや、既に共有になっている財産の共有状態を解消した方が良いケースも考えられます。その際は、法的な検討の他、税金も必ず絡んできますので、事前にシミュレーションをすることをお勧めします。
<免責条項>
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