国外財産調書の作成上の留意点

国外財産調書提出のインセンティブ措置

 国外財産調書制度は、国外財産を保有する本人に対し自主的に情報提供を求めるものであることから、適正な提出を促すためのインセンティブ措置が設けられています。

過少申告加算税等の軽減措置

 国外財産調書を提出期限内に提出した場合には、国外財産調書に記載がある国外財産について所得税等・相続税の申告漏れがあったときでも、その国外財産に係る過少申告加算税及び無申告加算税(以下「過少申告加算税等」といいます。)が5%軽減されます(国外送金等調書法第6条第1項)。

過少申告加算税等の加重措置

 以下の場合に、国外財産について所得税等・相続税の申告漏れがあったときは、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%加重されます※(国外送金等調書法第6条第3項)。
 ・国外財産調書を提出期限内に提出しない場合
 ・提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要なものの記載が不十分であると認められる場合を含みます)

 ※相続税に係る過少申告加算税等の加重措置については、令和2年4月1日以後に相続または遺贈により取得した国外財産に対する相続税について適用されます。
 
 なお、相続国外財産については、相続国外財産を有する方の責めに帰すべき事由が無く、国外財産調書の提出等が無い場合には、過少申告加算税等の加重措置の対象となりません※。
 ※この取り扱いは、令和2年分以後の所得税または令和2年4月1日以後に相続または遺贈により取得した国外財産に対する相続税について適用されます。

 また、次の場合には、相続税に係る過少申告加算税等の加重措置の適用はありません(国外送金等調書法第6条第5項)。
 ①その相続税に係る相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書の提出義務がない場合
 ②その相続税に係る相続人で相続開始年の翌年の12月31日において修正申告等の起因となる相続国外財産を有していない場合

過少申告加算税等の軽減措置及び加重措置の特例

 国外財産に係る所得税等・相続税の調査に際し修正申告等があり、過少申告加算税等の適用のある方が、税務署から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用または処分に係る書類の提示または提出を求められた場合に、その提示等を求められた日から指定された期限※までに提示等がなかったときは、次の措置が講じられます。
 ※提示等の準備に通常要する日数(60日を超えない範囲内)を勘案して決められます。

 ①過少申告加算税等の軽減措置は適用しない。
 ②過少申告加算税等の加重措置は、5%から10%に変更される

不提出による罰則

 次の行為をした場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することとされています(国外送金等調書法第10条)
 ①偽りの記載をして国外財産調書を提出した場合
 ②正当な理由なく提出期限内に国外財産調書を提出しなかった場合

(次ページは、国外財産調書提出のポイントを解説しています。)